佐藤可士和さん講演会
第三学期の始業式は、文京シビックセンター大ホールにて行いました。学校ではなく、ホールで行ったのは全校生徒にある方の話を聞いてもらおうと考えたためです。
今回、ご講演いただいたのは、本校卒業生の佐藤可士和さんでした。
佐藤可士和さんは、クリエイティブディレクターとして活躍されていて、「UNIQLO」や「くら寿司」「セブンイレブン」などのブランディングを手がけてきたことで知られています。常に、何件もの案件を担当されている中、本校の講演を依頼するのは少し臆するところもありましたが、思い切ってメールを出してみました。すると、メールを出した翌週に、快く講演を受けていただけるという返事が来て、嬉しく思うとともに、一歩を踏み出すことの大事さを実感しました。
講演前の年末に、佐藤可士和さんの職場「SAMURAI」のオフィスで打合せをさせていただきました。事前のメールで、「どんなことを話して欲しいですか」と聞かれていたことに対して、「これを話して欲しい」という具体的な考えがまとまらず、内心ドキドキしていました。事前に、生徒たちが聞いてみたいことについて、アンケートを取り、話の内容を決めようと準備していましたが、うまくストーリーを作ることができず、色々突っ込んで聞かれたら、どうしようと思いながら、オフィスに行ってしまいました。
そんな状態で打合せが始まり、私がイマイチな返答をしていると、「生徒の質問を見せてください」と言うことで、佐藤可士和さんが生徒の質問に答えてもらう形で話が進んでいきました。どのようにして、進路を決めることになったのか、剣道部のこと、マラソン大会のこと、高校時代のことを振り返って、様々なことをお話しいただきました。一通り話していただいたところで直感的に、「今、話していただいたことを、そのまま生徒に話してください」とお願いしてしまいました。
話の中で、特に印象に残ったことは「好きな感じ」というキーワードでした。最初に聞いたときは、一瞬「好きな漢字」と聞き間違え、???マークだらけでしたが、さらに聞いていくと、その感覚が理解できるようになりました。「好きなもの」ではなくて、「なぜそれが好きなのか」という感覚が大切だということでした。例えば、ゲームが「好き」ということは、ゲームをやって「人と集まること」が好きなのか、ゲームをするときの「高揚感」が好きなのかなどを意識していくと、「ゲーム」のところは別の「もの」に置き換えることができて、自分がやりたいことが深まっていくということでした。生徒に話してもらいたいことは、「正にそれです」とお伝えして、話の方向性が決まっていったのです。
最後に、佐藤可士和さんから、「最近の講演は話を短くするケースが増えてきていて、後半は対談形式ではどうですか」と提案がありました。「それはいいですね」となり、「ところで、誰と対談しましょう」と聞き返したところ「それは、校長でしょ」と言われてしまいました。私は、「えー!私ですか」と答えつつ、「例えば高校2年生の代表ではどうですか」と逃げてしまいました。この流れから、当日は生徒会長と副会長の2名と対談する形で、生徒からの質問に答えつつ、エッセンスを盛り込んでいくことになったのでした。
当日は、生徒会長と副会長の二人とも、緊張していたようでしたが、楽屋で可士和さんから声をかけていただき、だいぶリラックスした状況で本番に臨むことができたようでした。
一番の驚きは、講演の前の始業式で、佐藤可士和さんがの私のつたないパワーポイントを、袖から見ていらしたということでした。後から、そのことを聞いて、だいぶ恥ずかしくなってしまいました。
今回の講演は、かなりイレギュラーな形で実施しましたが、聞いていた生徒たちに何らかのことが引っかかってくれることを願っています。
令和6年2月11日
校長 岩本 正