「而今」今この時を精いっぱい大切に
10月30日、退勤時に警備員さんから「明日は小さい満月ですよ。」と声をかけられました。その瞬間に10月1日に中秋の名月を見たことを思い出しました。そして翌日、10月2度目の満月を見ることができました。太陽周期と月の満ち欠けの日数の差で起こるというだけのことですが、珍しいことなので何か幸せのきっかけになるといいなと期待してしまいました。
さて、ずいぶんと冷え込んできました。10月は、コロナの関係でこれまでできなかったことを、可能な範囲でやろうという動きが数多くありました。前号でお知らせしました「学年別スポーツ大会」を含め、10月の成城を紹介します。
1.入学の写真
中学1年生は、入学式も6月までの授業もオンラインでした。そのせいで、例年入学式に撮影していたクラスの写真がありません。まだ半袖シャツだけで過ごす生徒もいますが、季節的にも学生服を着始めたところなので、そろそろ撮影しようということになりました。クラスごとに日を決めて小講堂に集合し、撮影直前までマスクをすることにして実施しました。生徒は学生服を着慣れていないので、校章の位置など担任の先生が一人ひとりの着こなしをチェックしていました。感染防止対策の注意をしながら「みんなで集合して何かを行う」ということが、少しずつ始まったという感じがしました。
2.研究授業
前号で紹介しましたように、コロナの関係で教育実習が期間を変更して実施されました。10月の半ばからは研究授業が行われ、全ての実習生が研究授業を実施し関係の教員が参観しました。どの授業においても授業中の生徒の集中力が高く、縦のつながりの強い成城ならでは、と思ってみていました。今回の実習では日に日に授業が工夫され、生徒にとって分かりやすくなっていく様子が見受けられました。「卒業生としてではなく教師としての実習」と伝えて始めましたが、終わってみると、後輩である生徒たちへの面倒見がよく、生徒にとって先輩方の姿はカッコよく映ったことと想像します。また、生徒の頃を思い出し自主的に毎朝私と一緒に正門に立った実習生もいました。
3.学年別スポーツ大会
高校体育祭、中学運動会、マラソン大会など、1学期、2学期の行事が軒並み中止となり、生徒たちは、クラスや学年の交友を深めたり、リーダーシップを学んだりする機会を失っていました。そこで、校内の体育施設を活用してそのような機会を与えようと、10月考査の後に学年別スポーツ大会の企画が検討されました。急な発案で授業計画との兼ね合いから様々意見が出されましたが、一日一学年、他学年の授業と並行して行う形で実施が決まりました。この6日間は体育の授業ができませんので、体育科の先生方の協力なしにはできないことでした。
各学年とも、体育祭実行委員の生徒たちの取り組みが何より素晴らしかったです。特に高校生が中心となって、決定から僅かな日数でクラス色のTシャツを作り、コロナ感染予防対策を踏まえて自分達で種目を決め、まさに自治自律の精神で取り組んでいました。
昨年、中学運動会で最上級生としてリーダーシップを発揮していた、今年の高校1年生の一段と成長した姿に驚かされました。最後は「全員リレー」で盛り上げていました。
高校2年生は学校行事や部活動の中心的存在です。スポーツ大会では、サッカー、バレーボール、バスケットボールのクラスマッチを企画し、時間通りに運営していました。自分達で考えて自分たちで行動するという「自治自律」の様子がしっかりと伝わってきました。
高校3年生のスポーツ大会では、生徒たちが朝からハイテンションで、この日を楽しみにしていた様子が伝わってきました。高校3年ともなると、先生方は安心して生徒たちに任せていて、ただ後ろの方で見ているだけです。閉会式では、委員長の言葉で、これを機にまた受験モードに切り替えよう、みんなで頑張ろうと締めくくられました。
解散後に「楽しかったぁー!!」と叫ぶ声が聞こえ、この時間を上手に楽しんでいたことが伝わってきました。いろいろありましたが、やってよかったと思いました。
中学3年生は10月30日の学校説明会の最中だったため見ることはできませんでしたが、体育祭実行委員を中心に学年がまとまったことと思っています。他学年が授業中のため音楽を流したりすることが出来ない中で、工夫しながらやっていました。写真は校長室から見た中学3年の開会式の様子です。
私が学校説明会を終えて校舎に入ろうとしたとき、グラウンドから戻ってきた中学3年生の生徒が「僕たち1位でした!!」と嬉しそうに声をかけてくれました。「今できることを精一杯やろう。明日のために今この時を大切に‼」と心の中で返事をしました。
ヨーロッパではコロナの流行第3波が来たといわれ、世界の感染状況が深刻になっています。過日、ドイツ人の知り合いから、間もなくロックダウンがされて往来ができなくなるから今のうちに離れている家族に会うことにした、というメールが届きました。戦争でも始まるかのような書きぶりに驚いていましたが、11月まさに現実になりました。
自分達の力ではどうにもならないこと、変えられないことが現実として起こります。これを目の当たりにしたとき、もう駄目だと絶望してあきらめるか、あるがままに黙って受けとめ少しでも前に進もうとするか。できることかできないことかを識別して、今できることをどのようにしたらよりよくできるかと考えて行動していきたいと思います。「而今」とは今を大切に、ということです。
令和2年11月1日 校長 栗原卯田子