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台湾研修・山﨑直也先生講演会
3/18(土)、帝京大学教授山﨑直也先生の講演会を開催しました。講演会は、台湾研修の事前学習の最後を締めくくるものでした。山﨑先生は台湾研究の泰斗であり、本校の卒業生でもあります。
講演に先立ち、山﨑先生から生徒に課題が出されました。課題は2つあり、1つ目は、『台灣書旅 台湾を知るためのブックガイド』(台北駐日経済文化代表処 台湾文化センター・紀伊国屋書店、2022年)の洪郁如氏(一橋大学)と謝恵貞氏(台湾・文藻外語大学)の論文を読み要点を整理するというもの。2つ目は、台湾の高校生の「創作卒業ソング」を視聴し、台湾の学校教育について気付いた点、日本の学校との違いを考えるというものでした。
前半は、山﨑先生の講義でした。『台灣書旅』刊行時までの3年間で、台湾に関する書籍が日本で約400冊刊行されている。一見、台湾への関心の高さや親しみを表す数字のように見えるが、実際には、台湾への理解はあまり進んでいないと話を展開します。そして、洪郁如氏、謝恵貞氏の論文を引き、日本人の台湾への親近感や、台湾は「親日」的だ、という広く見られる言説への違和感を括り出します。
ここで山﨑先生は、「後輩のみなさんにぜひ伝えたい」として、2つのことをお話になりました。
それは、自分が「深く切り結ぶ異郷を持つ」こと、「外からの視点で日本を相対化して見る」ことの2つです。必ずしも台湾である必要はないが、自分が「深く切り結ぶ異郷を持つ」ことで、自分の〝当たり前〟が相対化される。一方、「外からの視点で日本を相対化して見る」ためには、〝他者のメガネ〟を借りるのが効果的である。〝他者のメガネ〟を借りるとは、読書と現地での交流のことである、というお話でした。これらのことを通じて、「相手側のロジックを立ち止まって考えられる」ようになって欲しいとして、気が付くと、洪氏や謝氏の提起した問題へと議論が流れ込んでいました。
後半は、「創作卒業ソング」についての生徒の回答を一つ一つ取り上げ、山﨑先生が解説を加える形で進行しました。日本の中高生と違い、部活文化というものが台湾には無く、その背景には、台湾の受験競争の激烈さと、多くの時間を勉強に割かねばならない台湾の高校生事情があるという指摘に、生徒たちは驚きの目を見張っていました。
1月以降、さまざまな事前学習会を実施してきました。山﨑先生の講演会は、それらを集約するものであり、同時に、台湾研修に臨む視点や観点を指し示すものでもありました。先輩・後輩の親しみのうちに、最後の事前学習会を終えられたことは、いかにも成城ならではと感じられました。
台湾では、現地で働いたり学んだりしている成城の先輩が、後輩の訪れを待っています。台湾研修が、こうして、年代を超えた成城生の繋がりを感じる機会ともなることを願っています。