令和元年のしめくくり
平成31年が5月に令和元年になり、いよいよ「令和元年」は今日で終わります。様々な出来事がありました。しかし、受験生にとって今は「しめくくり」というより「いよいよ本番」と構えているでしょう。最後まであきらめないという覚悟をもって頑張ってください。
さて、振返れば今年は、成城生の活躍や頑張りが素晴らしかったと思います。多くの生徒たちが部活動や創作活動、研究分野で表彰台に立ちました。校舎に掲げた懸垂幕も増えました。教職員も校内研修を受けたり、校外の研修に出向いたり、例年以上に取り組みました。教育改革や働き方改革など変化の激しい中で、法令改正もあり、私立学校の教職員として不易と流行を学んで、教育力と職場環境を向上させていこうと全教職員で頑張っています。この12月は、校内でスクールカウンセラーによる教職員研修を行いました。また、来年1月には弁護士を招聘して教職員研修をする予定です。このような中、今年は、12月に予定されていた成城中学2年生対象の「スキー教室」が、雪が少ないために中止され、校長室だより12月号は、「グローバルリーダー研修報告会」を中心に書くことにします。
1.グローバルリーダー研修報告会
12月18日(水)に、今年の夏に行われたグローバルリーダー研修(エンパワーメント・プログラム、オーストラリア研修、台湾研修)の報告会を小講堂で開催しました。準備、運営、司会等すべてを参加した生徒たちが担当して実施されました。小講堂の座席は興味関心のある保護者や生徒たちで埋め尽くされ、グローバルリーダー研修を始めた頃を思い出して、隔世の感を抱きました。 写真は会場いっぱいの来場者です。
生徒による発表は、エンパワーメント・プログラム、オーストラリア研修、台湾研修の順で行われました。
今年はさらに、新しい動きがありました。恒例の3つの研修報告の後、「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム・国際ボランティア分野」、「第4回高校生親善訪中研修旅行」、日本協会主催「ジュニアフェロー・リーダーシップ・プログラム」の報告が加わりました。下の写真は、高校生親善訪中研修旅行の報告で、宿泊ホテルや食事につい報告している場面です。
特に、最後の「ジュニアフェロー・リーダーシップ・プログラム」の研修報告は、高校3年の発表者2人による「後輩への思い」があふれ、自分たちの後ろに続けと呼びかける内容でした。来場した多くの皆さんの心に残ったのではないでしょうか。発表会を終えて多くの保護者からこの高校3年生のプレゼンについて高い評価をいただきました。
実はこの研修は、アメリカでの3週間のリーダーシップ育成プログラムで、日本全国から選ばれた10 人の高校生が参加するものです。過去に本校から3人の合格者が出て既に研修を終えています。そのうちの2人が今回「自分たちはこの3月に卒業してしまう。素晴らしい研修なので4人目の合格者を成城から出したい。」という思いを強くしていました。報告会の数日前に校長室にやって来て、「研修報告会の最後に、5分でも10分でもいいから僕たちに時間をください。」と作成したパワーポイントを私に見せながら思いを語った高校3年生でした。2人にやってもらって本当に良かった、と思っています。
いつも言いますが、成城生の成長は凄いです。ノビシロがまだまだあります。成城高校を卒業後、現在海外の大学に進学している者が4名、成城高校在籍中に1年間の留学を認められ海外の高校に留学中の者が2名いますが、彼らはみなこれらの研修から刺激を受けて、海外に目を向け始めました。海外に行くことが目的ではありません。外に目を向け、世界とつながる生き方を自分で考え、模索してほしいと思うのです。
2.研究者の卵
東京理科大学の化学科2年生の本校卒業生手島君から、今月2度メールが来ました。彼は、高校3年の11月に推薦で大学が決まりましたが、受験勉強に必死なクラスメイトを見て、自分が取り残されているような気持になり、何かに真剣に取り組もうと成城在学中に取り組んだ化学研究を再開し論文を雑誌に投稿しました。しかし結果は「掲載不可」。「やりきること」が大事だと気を取り直して研究を続け、再度論文を提出したところ論文が掲載されることとなり、結果として大学1年生で学会デビューを果たしました。かつてこの校長室だよりでも紹介したことがあります。
今回最初に来た便りは、理科大学の校友・父母による支援組織から支援金を獲得し、さらに、学内誌に研究活動の特集記事が4頁にわたって組まれたという報告でした。以下が理科大の学内雑誌に掲載された特集記事です。
次にきたメールは、夏頃に手島君から相談された理科研究活動の論文が2019年12月25日付で「実践政策学 Policy and Practice Studies」という雑誌に受理されたことの報告と、助言への感謝のメールでした。今は、本論文の掲載料と、大学の父母会からの助成金を合わせて研究活動ができていると書いてありました。さらに、別の化学の研究も進んでいて、3月には国際誌に投稿する準備を進めているそうです。だんだん研究者の卵になってきたととても嬉しく思っています。
手島君はいつも「成城での経験が私の研究の根幹です。」と言います。そして今、受験直前の後輩に宛て、「必ず良いことがあると思って頑張りましょう。欲を出さず、謙虚に頑張り続けることが大切だと思います。どうかこの見方を忘れず、飛躍してください。」と、自分が言われた言葉をそのまま使って後輩にメッセージを贈ってくれました。人生の土台が中高の6年間で作られること、そして成城では、部活動や臨海学校のみならず、グローバル研修やこのような研究場面まで、至る所で後輩へ思いを繋ぐ「縦のつながり」が育てられていることをあらためて強く感じました。
3.災害に備える取組
今年の秋は、台風被害が多くありました。中でも、成城臨海学校で長年お世話になっている千葉県岩井の民宿が15号による甚大な被害に遭い、実際に現地で見た光景は今なお印象に残っています。その後に始めた校内募金活動では、生徒、保護者、卒業生など、多くの方々のご厚志を頂き、民宿の方々にお届けすることができました。民宿の皆さんから学校にお礼状が届きました。元気に頑張っているようです。
ところで、本校は新宿区の指定避難所になっており、本校を会場にして「成城学校避難所運営管理協議会」を年に数回開催し、避難訓練などを毎年実施しています。ここ2年間ほどは、避難訓練の時に、体操部やジャグリング部のパフォーマンスを紹介して、地域の方々と成城学校の生徒を繋ぐ催しを実施しています。
近年、様々な災害事例を研究している順天堂大学の坪内先生を中心に、成城学校避難所運営管理協議会の下に、「成城避難所女子会」を弱者の視点から発足させ、校長室隣接会議室を提供して毎月勉強会を始めました。このほど、その活動が評価され、令和元年度女性活躍推進大賞(地域部門)を、成城学校避難所運営管理協議会並びに成城避難所女子会の連名で受賞いたしました。
http://www.seikatubunka.metro.tokyo.jp/danjo/jokatsu/taisho.html
成城生、そして受験を控えた未来の成城生のみなさん、成城の真の面白さは奥が深いです。本当に大事なことをコツコツやることが大切ですよ。じっくりと時間をかけることは無駄や失敗に思えるかもしれないけれど、大きな山を作るための「広いすそ野」になるので、大きな山を作るために絶対に必要です。焦らず手を抜かず、悠々と高い大きな山を作ることを目指して頑張りましょう。期待しています。
様々な話題に溢れた1年でした。皆様、どうぞよいお年をお迎えください。
令和元年12月31日 栗原 卯田子