成城学校の素顔
3月は、成城高等学校で過ごした生徒たちとの別れの月でした。他方、成城学校を卒業した人たちとの再会もありました。
今年度最後の「校長室だより」では、多方面からホットニュースをお届けして、様々な成城学校の素顔をお見せしたいと思います。
1. 文部科学大臣賞受賞
先月、本校の卒業生手島涼太君が、学会に論文デビューしたことをお知らせしました。今回は許可を得て実名を載せましたが、実は彼は東京理科大学1年生です。成城中学校時代から始めた実験を、成城高校でも大学に入ってからも続けていました。それら積み上げた成果を論文にまとめた結果、このたび正式に文科省から「文部科学大臣賞」(最高賞です)、日刊工業新聞社から「最優秀賞」(もちろん最高賞です)を受賞しました。写真は授賞式で発表する手島君。吹奏楽部のOBでもあります。
受賞にあたり手島君からメッセージが来ました。「おそらく、この受賞が成城の経験での最後になると思います。これからは、成城での経験を軸に、東京理科大学で多くの経験を積むことになると思います。本当にありがとうございました。」と書いてありました。「マイクロカプセル」に夢中だった中学生の手島君が懐かしく、彼の成長に驚くばかりです。下の写真は、左から、成城学校理科の水野教諭、手島涼太君です。
成城学校には中高時代にはあまり目立たず、コツコツと頑張って「大学で伸びる」という生徒がほかにもたくさんいます。こういう生徒を一人でも多く育てたい、といつも思っています。後輩のよき手本となるようこれからも頑張ってほしいと期待しています。
日刊工業新聞社 論文 http://rikokei.jp/winning/2018.html
日刊工業新聞社 授賞式 記事 https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00510767
東京理科大学 ホームページ https://www.tus.ac.jp/today/archive/20190308001.html
2.修学旅行
中学3年生が沖縄に、高校2年生が山陰方面に修学旅行に行きました。今年はいずれの旅行にも同行できませんでしたので、現地から元気一杯の写真が送られてくるのがとても楽しみでした。
サトウキビと、生徒たちが作った手作りの黒砂糖をお土産にもらいました。
3.インドとの学校交流
以前「分身ロボット」の活用で紹介したことがありますが、大学4年生の本校卒業生とその大学の友人が、3人の成城高校2年生との間に入って、インドのブッダガヤにある学校の生徒たちと交流を始めました。英語をツールとして、初めのうちはお互いを紹介し合うなど相互理解に重点が置かれていましたが、現在はテーマを設定してディスカッションや企画をしあい、考えたことを互いに発表し合っています。まだ試行段階です。下の写真は今年度最後にスカイプ交流した時の写真です。
4.今年度の高3の受験
ご存知のように大学入試には、推薦入試、AO入試、センター方式、一般受験など様々なタイプがあります。今年度の高校3年生は、人数が少ないせいもあり合格の総数はあまり多くはありませんでした。しかし、現役合格率、および進学率は前年より上がったようです。まだ完全な集計はできていませんが、医学部医学科の合格数も増えてきたように思います。
今年の特徴としては、文武両道で頑張り通した生徒たちが早慶など私立難関大学に、しかも一般入試で合格したことが挙げられます。野球部やバスケットボール部等の活動が活発な運動部で、部長やキャプテンなどリーダーとして活躍した生徒たちが、誰よりも時間がない中、難関大学に一般受験で挑戦し合格しました。肉体的にも精神的にも、大きなプレッシャーを乗り越えて見事に勝ち得た合格はこれからの人生に大きな力をもたらすことと期待しています。「最後まであきらめないで頑張る。」色々なところでこの頑張りを見せてくれた今年の高校3年生でした。5.明治から大正にかけての成城物語
本校には「雑誌成城」という自由な発表の場があります。今回私は、明治19年から大正15年にかけての5つの新聞記事を6月に手に入れたことから、それぞれの背景を調べて記事を繋げてみました。「明治・大正の新聞から読む成城物語」と題して原稿を書いてみました。「雑誌成城」の今年度号に掲載される予定です。文武両道により国のトップリーダー育成を実践した成城学校の歴史です。興味があれば読んでみてください。
6.大正時代の教育思想(成城と小石川)
今年度は何故か学校教育における教育思想について考える機会が多くありました。本校から分離独立した成城学園が創立百周年を迎えた記念として、「成城学園長と成城学校長の座談会」を実現したいと依頼があり、今年度6月に実現しました。分離独立以来初めてのことで、当然ですが、対談の話題は成城中学校(本校)と第二中学校(成城学園 )の両校の校長を兼務していた澤柳政太郎校長の教育観になりました。この時の対談も同じく「雑誌成城」に掲載される予定です。
対談でも触れましたが、実は、私の前任校小石川中等教育校の前身は、大正8年創立の東京府立第五中学校です。五中の初代校長伊藤長七は、成城学校の第9代校長澤柳政太郎と大変親しく、同じ自由主義教育思想の持ち主として教育研究をしていたことが、近年よくわかってきました。3月16日には、五中・小石川の同窓会主催による「長七フォーラム」が東洋大学で開催されました。私は小石川高校の最後の校長、小石川中等教育学校の完成までを担当した校長として、パネリストを依頼され参加しました。
パネルディスカッションでは、小石川在任時の教育の理想を語ったことはもちろんですが、大正6年4月に澤柳校長が現在の本校地に成城小学校を開校したことに対して、伊藤校長が教育研究誌に「大正6年度の教育界は『転廻期』と見るべき現象が現れた」と澤柳校長を讃えた文を紹介し、成城と小石川の教育の繋がりも紹介しました。
明治18年創立以来、底流を流れる成城学校の教育理念は「人間教育」にあります。それが大正時代に思想的にも深く「全人教育」として、広がったことを歴史的にも再確認できました。成城の教育は歴史的にも色々な顔があり、奥が深いです。
7.オーストラリアから来客
今日3月31日、本校の高校2年生が、オーストラリア研修でお世話になったホストマザーを連れて校長室にやってきました。日本が大好きという彼女はご主人と一緒に、日本をほぼ半周するハネムーン旅行を計画し、旅程に成城学校を加えてくれました。とても気さくで人懐こい方で、本校に試合に来ていた他校の生徒たちにも声をかけてチームをもりあげていました。この方たちに今年もお世話になれるでしょうか。
8.新年度に向けて台湾に行ってきました
グローバル化やIT化が進む中、教育改革をうまく進めているといわれる台湾に、教育視察に行ってきました。初日の夜は、台湾の大学に進学した本校卒業生たちに声をかけ、久々に会うことができました。彼らは、異国の地で「覚悟」を持って勉強に頑張っています。その様子がすごくよく伝わってきました。頑張れ!!
教育視察の大学訪問では、大学教育改革の一端であるIT教育のカリキュラムや実際の内容に触れました。
高校、中学、小学校の訪問では、各学校で英語とプログラミングの授業を見学させてもらい、授業をした先生たちと交流をしてきました。カリキュラム、授業計画、授業の実際、いずれも、大変素晴らしいものでした。
台湾の学校は女性が多く、師範大学付属中学校では校長も教頭も主任も担当者も皆女性でした。そんな中で伸び伸びと育っている男子生徒が印象的でした。
いよいよ明日から新年度が始まります。ともに頑張りましょう。平成31年3月31日 校長 栗原卯田子