好奇心から始まる
4月に入り、クジラが何頭も東京湾の中で確認されてニュースになりました。実は、先月の沖縄修学旅行中、美ら海水族館に向かうバスの中から海を眺めていた時、クジラを数頭見つけたことを思い出しました。
車内から、海の遠くやや左側にしぶきをあげているところを映しましたが・・・。この写真からは無理でしょうか。“春”ですね。実に偶然な出会いでした。桜が咲いて本校にも春がやってきました。
1.新年度のスタート
既に本校ホームページ「SCHOOL LIFE」で公開済ですが、4月6日、午前に中学校入学式、午後から高校入学式を実施しました。創立130周年を記念して植えられた正門脇の桜が、巻かれていた布を自力で破って太くなり満開の花を咲かせて新入生を迎えてくれました。新入生と共に新任の教員を7名迎えて、素晴らしい新年度のスタートとなりました。
2.吹奏楽部とジャグリング部の出張公演
4月8日と9日に、本校吹奏楽部とジャグリング部が飯田橋のショッピングセンター「ラムラ」の春のイベントに出演しました。8日は午後から吹奏楽部が演奏をしましたが私は会議があり行かれませんでした。アーケードには道をふさぐほど大勢の観客があったと聞きました。よかったです。翌9日に、同じくアーケードで行われたジャグリング部の演技を見に行きました。成城に初めてジャグリング同好会を立ち上げた卒業生や、校長室に絵を飾ってくれた美術の得意な卒業生などが駆けつけ、部員と一緒に参加してくれました。ちょうど私が着任した年に「ジャグリング同好会をよろしく」と校長室を訪ねてくれた生徒たちだったこと、親子で成城であることを教えてくれたこと、絵の話をしたことなど、様々な出来事が一気に思い出され懐かしい再会でした。
当日は音響がうまくいかず、雨も降っていて、少し盛り上がりに欠けてしまいましたが、つい最近まで1年生だった中学2年生を含め、これから部を支えていく生徒たちの一生懸命な演技に思わず「頑張れ!」と応援しました。発表の場の少ない生徒たちに場を与えてくださったラムラの関係の皆様に心より感謝しています。
3.エンパワーメント・スカラシップ参加生徒の報告
12日朝いつものように正門で生徒を迎えていると、「先生、スッゴクよかったです。ありがとうございました。」と声をかけられました。4月2~4日の3日間この春来日したアメリカの名門大学の学生たちと無料で「エンパワーメント・プログラム」に参加できる「エンパワーメント・スカラシップ」という催しがありました。本校生徒が3人選ばれ参加しましたがそのうちの一人でした。後から詳しく聞いたら、全国から集められた高校生と一緒に高いレベルのディスカッションをして、圧倒されたり、悔しい思いもしたりしたそうですが「滅茶苦茶やる気がでてきました。」と。充実した春休みでしたね。
4.しらせに乗る
突然ですが、南極観測船「しらせ」をご存知ですか。砕氷艦「しらせ」というのは聞いたことがありますか。実は同じ船ですが、南極越冬隊の任務は文部科学省が担当する研究分野と海上自衛隊が担当する運輸分野があり、任務により船の呼び名が違うのだそうです。「しらせ」に乗ることも「乗船」「乗艦」と区別されます。
4月14日、私は「しらせ」に乗り東京港から横須賀まで航海の体験をしてきました。
これは、第50次南極越冬隊を経験された武田康男さんと、第16次越冬隊で医師を務めた本校理事長などとのご縁で、この4月10日に帰ってきたばかりの第58次越冬隊の関係者との出会いが生まれて実現したことです。興味津々でした。
この日私は休みを取って朝8時30分東京港晴海埠頭に。理事長ご夫妻と一緒に貴重な体験をさせていただきました。現在も越冬隊の健康診断に関与されている理事長先生のおかげで、船の中の医務室を乗員の医師が特別に見せてくださいました。部屋に入って「当時とは全然違う、素晴らしい施設だ」と仰っておられました。
途中ベイブリッジの下を通りました。橋の下からの眺めも面白かったです。
「南極に行ってきました」というまるで南極にお店があるようなユーモアにあふれたお土産には「しらせ乗員限定」と書いてありました。
「南極の氷」の塊からは数万年前の空気がプチプチと出てきて神秘的でした。
なお、6月17日には、第50次南極越冬隊員で現在は気象予報士としてご活躍の武田康男先生が本校で講演をされる予定です。南極の空の話やオーロラの映像など生徒の皆さんは今から楽しみにしていてください。
5.鉄道研究部の報告
17日、鉄道研究部の生徒たちが、「のと鉄道」の車両の正面に実際に付けてもらった飾りをもって校長室にやってきました。自分たちのデザインが採用されたこと、実際にこれを付けて電車が走っていたことなど、生き生きと語ってくれました。2種類の飾りの一つを記念に校長室に展示することにしました。
6.旧き時代の財産
お母様の遺品を整理されていたところ、お父様のアルバムが出てきたとのことで、一冊のアルバムが学校に送られてきました。明治43年生まれの方々の成城中学校の卒業アルバムでした。同級生の中に、鐘ヶ江前理事長の名前見つけました。当時を知る貴重な資料として寄贈していただくことになりました。
また、ある大学の先生から私宛に、以前この校長室だよりで紹介したことがある本校の外国人講師で英語を教えていた「ベル先生」のことを尋ねるメールが来ました。史料室の中から、生徒に同行した野田への一泊旅行をしたときのベル先生の英文の感想文が出てきました。読んでみると、当時の生徒の様子や外国人から見た日本の風景、成城の校風等が伝わってきました。お菓子を食べきれないほどもらったことなども書かれていて、のびのびとした男子校の雰囲気は今も変わらないなと思いました。9月か10月に、現在ベル先生について著作をされているというベル先生の甥御さんご夫婦が来日されるとのことです。それまでには資料が提供できるよう周囲の力を借りながら調べてみたいと思っています。
偶然にも、前述したアルバムの「教員住所録」の8番目にベル先生の名前と住所を見つけました。時を同じくして不思議な二つの便りでした。伝統校の歴史は奥が深く、また好奇心を掻き立てます。
いよいよ新年度が始まりました。教室の中を覗くと、先生と生徒たちの元気なやりとりが聞こえます。国語では先生の音読に傾聴する生徒の目が輝いていました。突然私に中学1年生が「学校がたのしいです。」と言いに来たり、高校から入学した高1生が「ずっと前から成城にいるみたいです。」と言ってくれたり、まずまずのスタートか。楽しい学校生活の中、知的好奇心を高めて個性と能力をどんどん伸ばして逞しく成長してほしいと願っています。
平成29年4月30日 校長 栗原卯田子