~伝統教育とグローバル推進の夏~
生徒にとって7月は期末考査に始まり終業式で1学期が終わる月。中1は続いて臨海学校があります。そして、私にとっては台北駐日経済文化代表処の訪問、台湾の大学教授の訪問受け入れ、台湾の教育視察など、台湾との交流が数々ありました。今号ではこれらホットニュースも合わせて紹介したいと思います。
1.臨海学校
全国に先駆けて実施された成城の臨海学校は今年で開設90年目を迎えました。今年は7月17日から20日までの3泊4日で、台風接近による影響を心配しつつの実施でした。全中1生がクラス毎に7つの民宿に、高2補助員と教員の宿と合わせて千葉県岩井海岸の8軒の民宿にお世話になりました。
初日から波が荒く、初級、中級の生徒は波乗りを楽しんでいました。
遠泳は地元漁師さんの意見を参考に中止されましたが、これに代わるスイカ割りやゲームなど浜でのレクリエーションは大変盛り上がりました。高2の補助員のお蔭です。
今年も補助員は素晴らしく、早朝から海水温を測ったり,船を出し入れしたり、校旗を上げたり、レクを企画したりする運営の補助はもとより、生徒の水泳指導に取り組んでいました。特に、泳げない生徒が荒波にのまれないよう自分が海側に立って初級の生徒を指導するなど面倒見が良く、優しさと逞しさを垣間見ました。「かっこいいなぁ~」「僕もああなりたいなぁ~」。中1にとって、まさに高2はロールモデルとなり、高2にとってはリーダー教育の場となりました。彼らは朝礼後、中1が宿に戻るや海辺を走ってトレーニングに励んでいました。
2.台湾との教育交流 ①台北駐日経済文化代表処の訪問
7月15日に、台湾研修参加予定生徒24名と引率の先生とともに事前学習として、台北駐日経済文化代表処を訪問しました。台湾の大使館にあたるところで、この日はたまたま東京大学に留学している台湾の大学生が来ていました。彼と一緒に台湾の気候風土、文化や教育について学び、いよいよ迫る台湾研修の参考にすることができました。
3.台湾との教育交流 ②台湾の大学教授の訪問受け入れ
7月16日終業式の午後、台湾から開南大学、実践大学、文藻外語大学、国立高雄第一科技大学の4大学による本校訪問がありました。台湾研修参加生徒を含む一般生徒を対象に、大学の先生による講演会が開催されました。その後、校長室にて各大学の先生方と懇談をしました。台湾は国をあげてグローバル化に向けて様々な取り組みをしていること、学費が安いこと、アメリカ等への留学制度があることなど、各大学の特徴がプレゼンされました。これらの大学からは、日本から多くの留学生を受け入れたい意向が示されました。
4.台湾との教育交流 ③台湾の教育視察
7月28日から7月31日、厳密には8月1日まで台湾教育視察に参加しました。最終日7月31日には、本校生徒が参加しているサマーキャンプと開南大学で合流し、彼らの中国語体験授業を参観しました。
- ≪台北医学大学≫TMU
1960年に開校した台北101のすぐ近くにある私立大学で、QSアジア大学ランキング46位の医学総合大学で、4つの附属病院は臨床研究医療センターとなっています。ここでは、日本の高校を卒業してこの大学に在籍している日本人女子学生が印象的でした。大阪出身で親が医者をしているとのこと。2人の兄は東大を卒業し、自分は海外大学を希望して今台北医学大学で学んでいるが、いずれは両国の医師の国家資格をとることを目指しているそうです。テキストは英語、授業は中国語。「授業レベルの中国語はさっぱりわからないけれど、英語のテキストを必死に予習して授業についていく。」授業後に先生に聞きに行くという勉強の仕方で何とか単位をとっているのだとか。素晴らしい素敵な女性に出会えました。
- ≪実践大学≫
2014米ranker「世界のデザイン学校ベスト30」に選ばれた私立大学。ランキングは22位。海外の姉妹校と提携していて、1年間の留学で元々の大学と留学先の大学の両方の単位を得られる「ダブルデイグリー」というシステムがあり、このシステムで提携している日本の大学は、長崎外語大、麗澤大学だそうです。
- ≪延平高級中学校≫
台北市にある私立中高一貫校で、政府の補助金を受けずに柔軟な教育を展開しています。60クラスに2,756人の生徒が学んでいて大学進学率は100%、国立大学と医学部の比率は50~70%です。部活動が盛んで、ほかに様々なコンテスト例えば国際生物学オリンピックなどで実績をあげている学校です。当日は夏休み中にもかかわらず多くの生徒が登校しいて、外国語センターで、中学1年生と、高校2年生の英語の授業を参観させてもらいました。アメリカ人と台湾人がそれぞれの授業を担当。日本でいう補習、講習にあたります。
- ≪国立台湾師範大学≫
ここでは「台湾の英語教育について」の講演を聞き参加者と座談会をしました。講師は、国立台湾師範大学学部長で台湾の英語の教科書作成等に関わってきた先生と、台湾で最も国際的な大学と言われる銘伝大学の先生の2人でした。師範大学の英語学科の成果で台湾の英語教育が大きく変化したとのことです。課題は英語嫌いな生徒の学力伸長で、座談会では活発な議論がされました。
- ≪教育部≫
教育部とは、日本の文科省にあたるところで、国際教育部参事の方に説明していただいた。中国語(華語)の指導者として訓練された教員を派遣する事業を展開するという興味深い話を聞くことができました。今後グローバル化が進展する中で、今までの教育では勝てないというのが日台の共通認識でした。結局アジアでは、英語と華語と日本語がツールとなり、この3つをこなせることが武器になるという流れでした。英語と華語の話せる日本人が求められているということがひしひしと伝わってきました。
今回の教育部への訪問は7月30日の午前中でしたが、この日の夜から教育部の前で高校生らが抗議活動をしたと新聞で知りました。台湾の学習指導要領の改訂に伴い、歴史の教科書などの内容が中国寄りになるとして撤回を求める抗議だったようです。
- ≪国立台湾大学≫
歴史があり広大なキャンパスに重厚な建物が林立していて、ガジュマルの木々が暑さの中で木陰を作っていました。国立台灣大学は世界ランキングが高く、大学と大学院の概要紹介の後、デュアルシステムで東大の大学院に留学していたことのある教授から話を伺いました。 Industry と Academic の両方の分野で研究に取り組んでおられるエネルギッシュな農芸化学の教授の話でした。世界中から学生を集めていて、台湾人と留学生の両方の学生から話を聞くことができました。女性が元気でした。男子は兵役があるので時期を考えながら研究を進めていました。
- ≪開南大学≫
本校生徒が参加しているサマーキャンプと合流し、副学長による「アジア経済から見たグローバル化」と題した講演を聞きました。アジア経済の現状と、中国が世界の主導権を握ろうとしている現実を話され、これからどう生きていくべきかを考える講演でした。
今回の研修の合間に、台湾の大学に留学している日本人学生と、その保護者の方々に会って話を聞く機会を得ました。「自分が頑張らなければ何も得られない。」自分が努力することに価値を見いだせた男女の強い若者に出会えたことが素晴らしいことでした。
平成27年8月2日
学校法人成城学校
成城中学高等学校
校長 栗原卯田子